札幌市電「ササラ電車」の秘密。いつ運行?どんな構造?詳しく解説

除雪中の札幌市電ササラ電車 北海道の秘密発見

除雪中の札幌市電ササラ電車

ササラ電車とは、車両の前後に取りつけられた竹のササラを回転させ、線路上の雪をけ散らしながら走る除雪車。
豪雪都市札幌を走る路面電車、札幌市電には欠かせない車両で、ササラ電車が運行する風景は「札幌の冬の風物詩」とも言われています。

いつ運行するの?どんな構造?仕組みは?運行ダイヤは?どうやって走るの?
ササラ電車の秘密に迫りつつ、詳しく解説します。

 

▲粋な運転手さん、目の前で減速してササラの回転を見せてくれました♪

ササラ電車は札幌の冬の風物詩

例年11月位になると、札幌の市街地では雪がちらつき、うっすら積もる日が出てきます。
軌道(路面電車の線路)上に雪が積もるとササラ電車の出番。

毎年ササラ電車が動き出すと、新聞やテレビなど各種ニュースでは「今年もササラ電車が出動しました」「ササラ電車が今季初出動」などと報じられます。
ササラ電車の運行風景は札幌市街地で昔から続く冬の日常光景。
札幌の冬の風物詩とも呼ばれています。

以前、札幌市交通局の電車事業所にお邪魔して、ササラ電車の運行体制や仕組みについてなど、かなり詳しいことを伺いました。
その時見聞きした内容を交えつつ、紹介していきます。

札幌市電の電車事業所

▲札幌市電の電車事業所

ササラ電車を確実に見たいなら冬の早朝

ササラ電車を見てみたい方にとっては、ササラ電車はいつ走るのか、ササラ電車のダイヤグラムはどうなっているのか気になる方は多いのでは。

ササラ電車が運行されるタイミングは大きく2パターンあります。

  1. 雪が降り始めた直後
  2. 冬期の早朝4時すぎ

ササラ電車が運行される時【1】雪が降り始めた直後

1つ目は単純明快、雪が降り始めた直後です。

雪が積もって車に踏み固められる前に、軌道上の雪を払いのけなければいけません。
そのため、朝昼晩、日中はもちろん夜間でも雪が降り始めたら即出動。
雪の降り方が強い場合は複数のササラ電車で軌道上の除雪をします。

ただ、すすきの~狸小路~西4丁目間は軌道下にあるロードヒーティングで融雪するため、この区間では除雪はしません。
軌道が歩道に隣接しているため、ササラ電車で除雪をすると雪が歩道に飛んでしまうため融雪しています。

ササラ電車が運行される時【2】冬期の早朝4時すぎ

2つ目は冬期の早朝4時すぎ。

冬期は雪が降っていても降っていなくても、毎朝4時に点検を兼ねて必ずササラ電車で全線を往復運行します。

もしも軌道上に積雪がないなら単にササラ電車が通過していくだけですが、雪が積もっているなら交通量が少ない中なので迫力ある除雪風景を眺められるはずです。
もっとも、早朝4時台ですと夜明け前で空は真っ暗ではありますが……。

雪を蹴散らすか否かは別として、ササラ電車を確実に見てみたいという方は頑張って早起きか夜更かししましょう♪

ただし、軌道脇や電停(路面電車のホーム)での見学や撮影は危険なのでご注意を。

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ササラ電車の仕組みと構造の秘密を公開

ササラ電車の基本的な仕組みは、なんと約100年前からほとんど進化がありません。
なぜでしょう?
ササラ電車のササラとは何か、ササラ電車はどんな構造をしているのかなど、約100年続く匠の技がつまったササラ電車の秘密に迫ります。

ササラ電車のササラって何?

ササラ電車のササラとは、「茶せん」や「竹ブラシ」のように竹を細く裂いてできた円筒形の束のこと。
この竹の束を電車の前後に大量に取りつけた車両がササラ電車です。

札幌市電ササラ電車のササラ

ササラ電車は旅客用の電車とは異なり乗客を乗せるスペースがなく、電車というより小さな電気機関車に除雪装置を取り付けたようなもの。

つまりササラ電車は、ササラを装着したミニ電気機関車が、竹箒で雪を掃きながら走るイメージです。

ササラ電車は100年間受け継がれた匠の技の結晶

ササラ電車の歴史は古く、1925(大正14)年に札幌電気軌道(札幌市電の前身)の技師長助川貞利氏が、台所用品のササラをヒントに3年間の試行錯誤を経て開発されました。

その後、竹以外の材質や除雪方法を試してみたもののあまりいい成果がなかったそうです。
結果的に竹が一番優れているため、約1世紀近く月日を経た今でも基本的な構造はほとんど変わらず受け継がれているそうです。

ササラ電車のササラの作り方とササラの数

ササラ電車のササラは竹製。
以前は山口県の孟宗竹を使用していましたが、近年は東北地方の真竹を使用しています。

ササラ電車に使用するササラ1束のサイズは長さ28.5cm、直径3.5cm。
束の先端は約200本に分かれ、それぞれが2m角に統一。
束の根元側は太さ1.2mmの針金で3箇所を束ねられています。

サイズや製法を指定したうえで束にしたものを大量に仕入れ、市電職員の皆さんの手作業で加工をしてササラ電車へ取り付けていくそうです。

札幌市電ササラ電車のササラ

▲右の断面が丸いものが納品された状態のササラ。その後加工すると真ん中の楕円形の状態になり、さらに釘を打ち込んで左のようになります

まず、針金で巻かれた根本の部分をハンマーでたたいて楕円形にし、くぎを2本打ちます。
くぎ2本のうち1本は気持ち斜めに打ち込むそうです。
気持ち斜めにすることで抜けにくくなるという先代からの教えなのだとか。これぞまさに代々続く匠の技。

札幌市電ササラ電車のササラ

このササラの束を、アピトンという輸入木材で作られた堅い木台に打ちつけていきます。
1本の木台に50束のササラを一直線に打ちつけ、打ち付けた8本の木台を一組として回転軸へ放射状に取りつます。

これを車両の前後に取りつけ、金具で締め付けるとササラ電車の完成です。

このように、ササラ電車は工場で機械によって組み立てられるのではなく、なんと100年前と変わらず人力で組み立てられているのです。

札幌市電ササラ電車のササラ

ササラ電車1両あたりに取り付けられたササラの数は以下となります。

  • 50束×8本×前後2か所=800束

ササラ電車1両800束のササラで除雪をしているということになります。

ササラ電車のササラの耐久性は?どのくらい持つの?

札幌は積雪が多い豪雪都市。
新しく取りつけたササラは1シーズン持たなく、ひと冬に2、3回程度新しいものに付け替えます。
特に近年は温暖化などにより粉雪が減って湿った雪の日が多くなっているため、昔よりもササラがダメになるペースが早くなってきているそうです。

札幌市電ササラ電車の使用済ササラ

▲札幌市電ササラ電車の使用済ササラ

電車事業所の片隅には使用済のササラの山が積まれていました。
厳冬の格闘を終えた竹の先はすり減りどれもボロボロです。

ササラ電車はどうやって除雪しながら走るの?

ササラ作りにも熟練した技術や経験が必要ですが、運転にもスキルが必要です。

毎年冬になると、ササラ電車に関わる7人の特別チームが編成されます。
みなさん通常は市電の運転手さんですが、冬から春の雪解けまでの間は除雪専属の業務となり、7名でササラ電車の運転業務とササラ作り業務を交代で回します。

札幌市電ササラ電車の運転席

ササラ電車を運転する際には必ず2人1組で乗車。1人が電車の運転をし、もう1人がササラの操作を担当します。

ササラ電車はササラを路面にこすりつけながら走るので走行時の抵抗が大きいうえ、通常の電車と構造が大きく異なるため運転はかなり難しく、技術とスキルを求められます。
そのため、市電の運転手さんが誰でもササラ電車を運転できるわけではないそうです。
運転のしかたがよくないと運転室内に電気の火花が散ることもあるのだとか。

運行中の札幌市電ササラ電車

ササラの回転もかなり神経を使う作業。
ササラがすり減っている場合はササラの高さを微妙に下げ、路面の凹凸や積雪状況によっては即座に上下させる必要があります。
上下だけではなく、道路脇に車がいる時や電停がある所では回転を止める場合もあればササラの角度を左右にずらして雪を飛ばす方向を変えることも。

走行しながらササラの状態と路面状況に合わせ、臨機応変にササラを操作しなくてはいけません。

ササラ電車を運転するには卓越した操作技術が求められます。

冬の札幌市民の足を守る7人の精鋭

前述したように、ササラ電車は冬の毎日早朝4時のほか、雪が降り始めたら必ず運行します。
雪の降り方によってはササラ電車が2台、3台とフル回転で運行する時もあるのだとか。
運行しない時はお休みかと思いきや、ササラ作りの作業が待っています。

札幌市電ササラ電車のササラ

ササラ作りもササラ電車の運行も、代々続く卓越した技術と経験の賜。
これを毎冬7人でこなしています。

お話を伺った札幌市交通局の方が最後にこう言いました。
「真冬の雪が多い日でも、電車の遅れは多少あっても運休になることはほぼありません」

寒い雪の日でも電停で待っていれば必ずやってくる札幌市電。7人の精鋭が冬の札幌市民の足を守っています。

 

 

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